春子先輩と僕。
*
カバンを取りに教室に戻ると、遼がいて。
「…」
無言で見つめられる。
何だよ、急いでる時に限って。
「何迷ってんの。言いたいことあるなら言えよ。俺今急いでんの。」
…遼ってこういうとこあるんだよね。昔から。
一番言いたいことを言わなきゃならないときに迷う癖。
「…電話がさぁ、かかってくるんだよね。」
やっと話し始めたと思ったら何の話だよ。
「ここ、2週間。ずっと。」
やけに2週間を強調して言ってくるから、聞かざるを得ない。
僕が、春子先輩と喧嘩してからずっとってことだ。
「何を話す訳でもなくて、泣いてんの。ずっと。」
…まさか。
「何を聞いても答えてくんなくて、ずっと泣いてんの。まじで。」
それって、。
「大学にもずっと行ってないっぽいよ。」
春子先輩、…。
「お前、前に言ってたよな。自分の方が愛が重いって。相手からの愛の方が少ないって。」
「…言ったけど。」
「…電話の相手も、同じこと言ってたぜ。仲良いかよ。まじ。」
ドクン…
っ、嘘、だろ…
「まじ、?」
「まじだっつってんの。早く行けよ、…」
まだ言い切ってなかったっぽいけど、気にしてらんない。
会いたい、春子先輩。