春子先輩と僕。

*

カバンを取りに教室に戻ると、遼がいて。



「…」



無言で見つめられる。
何だよ、急いでる時に限って。


「何迷ってんの。言いたいことあるなら言えよ。俺今急いでんの。」



…遼ってこういうとこあるんだよね。昔から。



一番言いたいことを言わなきゃならないときに迷う癖。




「…電話がさぁ、かかってくるんだよね。」



やっと話し始めたと思ったら何の話だよ。



「ここ、2週間。ずっと。」



やけに2週間を強調して言ってくるから、聞かざるを得ない。



僕が、春子先輩と喧嘩してからずっとってことだ。




「何を話す訳でもなくて、泣いてんの。ずっと。」




…まさか。




「何を聞いても答えてくんなくて、ずっと泣いてんの。まじで。」




それって、。




「大学にもずっと行ってないっぽいよ。」




春子先輩、…。





「お前、前に言ってたよな。自分の方が愛が重いって。相手からの愛の方が少ないって。」



「…言ったけど。」




「…電話の相手も、同じこと言ってたぜ。仲良いかよ。まじ。」



ドクン…



っ、嘘、だろ…



「まじ、?」


「まじだっつってんの。早く行けよ、…」


まだ言い切ってなかったっぽいけど、気にしてらんない。



会いたい、春子先輩。



< 12 / 20 >

この作品をシェア

pagetop