最後の悪夢

そしてそのまま、通話を切った。


私を見て我に返り、きまりが悪そうに苦笑する凛上。


「……ごめん、なんか熱くなって」


携帯を手渡されて受けとる。凛上の手が震えていた。怒っているのか。隠しきれて、ないんだ。不器用な人なのか。

でも私のことをかばってくれてありがとうって、思っているよ。

「ううん、いいよ。それより私のこと──」




お礼を言おうとした。


でも私は、その瞬間に視界に入ったもので、全てが白紙に戻された気がした。

緩んでいた空気が一気に体にまとわりついて、そのまま絞め殺そうとする。悲鳴が、出そうだった。



黒いフードを被り包丁を持った人物と、目が合ったのである。
< 132 / 456 >

この作品をシェア

pagetop