最後の悪夢
そしてそのまま、通話を切った。
私を見て我に返り、きまりが悪そうに苦笑する凛上。
「……ごめん、なんか熱くなって」
携帯を手渡されて受けとる。凛上の手が震えていた。怒っているのか。隠しきれて、ないんだ。不器用な人なのか。
でも私のことをかばってくれてありがとうって、思っているよ。
「ううん、いいよ。それより私のこと──」
お礼を言おうとした。
でも私は、その瞬間に視界に入ったもので、全てが白紙に戻された気がした。
緩んでいた空気が一気に体にまとわりついて、そのまま絞め殺そうとする。悲鳴が、出そうだった。
黒いフードを被り包丁を持った人物と、目が合ったのである。