最後の悪夢
焦りがピークに達し、脳が瞬時に高速回転を始める。
店の隙間。
後退したとしてどこに出るか分からない。
凶器。こちらはなにも持っていない。
私の体の真横に樽がある。
重さは知らないけど、これを、なんとか倒せないだろうか。
目が合ったのは凛上を挟んで向こう側。道に出る方。凛上は気づいていない。
黒いフードの人物は目が合うなり、こちらに歩いてきた。私は、なにをするでもなく、反射的に叫んだ。
「走って」
体の向きを変えて走り出す。