最後の悪夢
人が来る気がして、私は先輩をなだめて一緒に外に出るように言った。外に出て人気のない駐輪場に行って、そこでも先輩は嗚咽した。
「先輩、なにがあったんですか? 合宿、そんなに辛かったんですか?」
「うん……うん」
先輩は泣きながら頷いた。
涙で顔をグシャグシャにして、悲しみを全身に纏うその姿。見ている私まで胸が苦しくなった。
先輩が泣き止むと、それからなにも聞かずに私は先輩を送り出した。
先輩にとってそんなに辛い合宿だったんだ、とひたすらに、その時の私は思った。私は受けないでおきたい、とも思った。
けれど時間がたつにつれ、その時の思いは風化していくんだ。
どれだけ辛くても苦しくても、過去の痛みは分からない。思い出せない。