最後の悪夢

ステージ上に設置された教卓の前に立ち、マイクに向かって淡々と事実を述べる河井先輩。容姿もさほど変わっていないのに、その目はどこか冷たかった。

6人でステージを見上げて、その話を聞くことしかできない。
盛大な種明かしではない。内容は確かに驚くべき事ばかりだ。でも、なんだか頭に入って来ない。


たぶん無意識のうちに混乱していたのだ。
それからなにを言われても、聞き取って頭に残ったのはその断片ばかりで、ほとんどが耳から耳へ抜けていくだけだった。


「何か痛みを感じて死んだと錯覚することで、催眠は解けます。解けると一旦気を失い、次に目を覚ましたときには幻覚は見えなくなっています。

あなた達もそのうち催眠が解ければ、もう既に解けた人に会えますよ。催眠は時間経過でも解けるので」


私は手を上げた。それを聞いた時ある人の顔が浮かんだ。河井先輩が「どうぞ」と言って私に質問をさせてくれた。
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