赤い瞳に今日も溺れる―飢えた漆黒の吸血鬼―
ときめきの上弦の月
──パチッ。
目を覚ますと、見慣れない天井が視界いっぱいに入ってきた。
ん……? ここどこ? 保健室?
にしては妙に静かだ。
寝ぼけたままキョロキョロと周りを見渡すと、腕に管が繋がれているのが見えた。
点滴……? ってことは、ここ病院⁉ なんで⁉
目覚めて数十秒の起動していない頭で、必死に記憶を呼び起こす。
えっと……昨日千冬と図書室に行って、筆箱を忘れて取りに戻って。
そしたら、吸血鬼の男の子に出会って……。
──ガラガラガラッ。
「「風花……!」」
「お母さん! 千冬!」
ドアが開くと、そこには母と制服姿の千冬が立っていた。
母は少し涙目になっていて、千冬は少し青白い顔で安堵した表情を浮かべている。
「大丈夫? どこも痛くない? 苦しくない?」
「うん、大丈夫だよ」
母ににっこり笑って答えると、「良かった……」と点滴が繋がれていない側の手をギュッと握られた。