赤い瞳に今日も溺れる―飢えた漆黒の吸血鬼―


「大丈夫だよ」なんて笑っているけれど……絶対無理してるはず。


毎日のようにずっと一緒にいた人と、突然仲違いして、何年も顔を合わせられず、連絡もできなくなってしまった。

大丈夫なはずがないよ。



「今は難しいけど……年末か年明けには仲直りして、4人で会えたらいいなって思ってる。だから全然無神経じゃないよ」



月明かりに照らされた笑顔を見て、胸が苦しくなった。



「……そっか。俺も協力するから、焦らずゆっくり頑張ろうな」

「うんっ」



あぁもう。
全てが愛しくて、今すぐにでも抱きしめたい。


でも……できない。しちゃいけない。


初めて手の甲から吸血した時の震えている姿を見ているから。

表面では笑っていても、内心は無理しているかもしれないから。


本当は真っ直ぐ伝えたいけど、怖がらせたくない。困らせたくない。

だから今は──。



「それにしても、今日はよく晴れてるよね。本当…………月が綺麗だ」


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