星空とミルクティー
「部屋の中に入れなかったから、ベランダから星数えてたんだよ。寒いし暇つぶしで。
そしたら警察とたぶん役所か施設の人なんだろうけど、大人が何人も部屋の中に入ってきてさ、親は連れていかれるし俺はわけわかんないまま車に乗せられて色々聞かれるし、ちょっと怖かったなぁ」
「…………」
「まぁ、おかげで殺されずに済んだんだけど」
たちの悪いジョークでも言うように真雪が笑った。
殺されずに済んだという言葉と真雪の体についた傷跡がリンクして、何も言えなくなる。
「そういや、初めて汐とまともに話したときも満月だった気がする」
「……そうだな」
「汐は、なぜか俺がしんどいときにいつも遭遇するんだよね」
すごい偶然のように真雪は言ったけど、あたしはそう思わなかった。
だってずっと気にかけて、見ていたから。
高校卒業と同時に突然、大人から手を離された18歳の子が、どうやって1人で生きていくのか心配だった。
今でも鮮明に覚えている。
施設の職員が真雪を「感情を出すのが苦手な子」と言ったこと、それを横で聞いていた真雪の目。
あたしはかつての自分と真雪を、勝手に重ねていた。
母親から何度も邪魔だと家を追い出されて、父親からは腫れ物を扱うような目で見られる。
子供は大人が思っている以上に、言葉と視線に敏感なのに。