素直にさせないで
「よぉしっ!!最終Q一気に畳み掛けるぜぇ!!お前らこの俺様にパス回しやがれぇっ!」
「「はっはい不破さん!!」」
コートの中心からはバカの声が響き渡り、それに気合い入れた仲間達が声を揃えて返事をする。
だが、試合開始のブザーが鳴り響くと同時に、
「え…!?」
ガードの湊へとボールを渡った瞬間にリングへとロングシュートを放ったのだ。
スパッ…!
その長く細い華奢な白い指先から放たれたボールは、空中で綺麗な弧を描き、鮮やかにネットを揺らすのを私はスローモーションのコマ送りのようにこの目に映った。
「なんて綺麗なシュート…」
会場中でも同じようなため息が漏れていた。
バカのオラオラのシュートとは違い、華のあるしなやかに放たれたシュートはこの目に焼き付いていて、しばらく口を開けたまま動けずにいると、
「ぅおいっっ!!!翔真ぁぁあっ!!てめぇ何得点してやがるこの俺様にパスを回せって言っただろぉぉがっ!!」
もちろんこのバカ男は黙っちゃいない・・・。
「あと、28点ですね。」
「あぁっ!?」
「不破さんに追い付くまで。」
「なんだってぇ!?おまっ…」
バカに詰め寄られても、まるで動じることなく、飄々とした顔で湊はにこっと笑顔を向ける。
パスッ…!!
そして一切不破にパスを回さずに続け様に湊のシュートが次々に決まると、
「こぉらぁぁあっ翔真ぁぁあっ!!!待てぇぇえ」
ディフェンスにも関わらず、バカは湊を追いかけ回す。
「なっなにやってるんだ・・名古屋の奴ら・・」
相手チームベンチも観客達も引き気味で見ている。