契約夫婦のはずが、極上の新婚初夜を教えられました
 時計の針が動く以外、音がなくなっていた部屋で一番に口火を切ったのは、やはり父だ。

「八重。さっきも言ったが、結婚を認めることはできない。なんで月菱酒造の社長が、お前なんかと結婚するんだ? なあ、そうだろう? お前はおかしいとは思わないのか?」
「それって、どういう意味?」
 
 おかしいって、その意味次第では相手が誰であろうと絶対に許さない。

 父の聞き捨てならない言葉に手は小刻みに震え、答える声が普段より低くなる。

「言葉そのままの意味だ。よく考えてみろ。月菱酒造の社長がお前と結婚しても、なんのメリットもない。それなのに結婚とか、何か裏があるか騙されているに決まっている」
 
 吐き捨てるようにそう言うと、父は大きなため息をついてそっぽを向いた。真面目で無口な父のこんな姿を見るのは初めてで、困惑してしまう。
 
 それでも裏があるとか騙されているとか、大吾さんのことを何も知らないのに一方的で身勝手な言い分には到底納得できるものではない。



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