契約夫婦のはずが、極上の新婚初夜を教えられました
「お父さん。今日のこの短い時間で結婚を許してもらえるとは思っていません。お父さんに納得してもらえるまで、笑顔で許しをいただけるまで、何度でも話をしに行くつもりです」
「大吾さん……」
 
 想いは大吾さんも同じだったようで、まさか考えていることが一緒だったとはと驚いてしまう。

 以心伝心とまではいかなくても、ふたりの気持ちが繋がっているようで嬉しい──そう思うと涙は完全に止まり、勝手に頬が緩みだした。

「私も一緒に行くから、お父さん覚悟しておいてね。私は負けないから」
 
 私たちの結婚も両親とのことも、まだ始まったばかり。そんなにのんびりしているわけにもいかないけれど、焦って失敗するわけにもいかない。
 
 そのときふと、大吾さんのマンションに引っ越した日の彼の言葉を思い出す。

 だったら、今から恋を始めればいい──。

 今はこの言葉の意味がよくわかるような気がする。

 頑張った先にもしかしたら、偽装結婚から“偽装”が取れる日が来るかもわからないのだから……。


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