契約夫婦のはずが、極上の新婚初夜を教えられました
「ふたりの気持ちはわかった。でも私の気持ちは変わらない。まあ話しに来たいというのなら、それを断る理由もない。ふたりとも、好きにすればいい」
 
 父はそれだけ言って、ソファから立ち上がる。

「え? もう帰るつもり?」

 私がそう問いかけると、母は肩をすくめた。父次第ということだろうか。

「せっかくここまで来ていただいたのだから、ここで一泊ぐらいしていってください」
 
 この部屋を用意してくれた大吾さんには本当に申し訳ないけれど、ここのスイートルームに泊まれるなんていうことは一生に一度だってない。出来れば両親に夢のような時間をと思っていた。
 
 でも父はすぐに眉根を寄せ、不服そうな顔をして大吾さんを睨みつけた。

「なんだ。君は私に、明日も仕事を休めと言っているのか?」
「あ、いえ、そういうわけでは……。勝手なことを言ってすみません」
 
 頭を下げる大吾さんに、父の表情から強さが消える。



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