契約夫婦のはずが、極上の新婚初夜を教えられました
「大丈夫だ、落としたりしない。でもそうやって、ちゃんと掴まっていろ。そのほうが、俺が嬉しい」
 
 大吾さんの言っていることは気になるけれど、今はそんなことより恐怖心のほうが上回っていてそれどころじゃない。

 大吾さんは私を抱き上げたまま歩き出し、身体がゆさゆさ揺れると落ちないよう彼に必死にしがみついた。
 
 どこに行くの?
 
 怖くて固く瞑ったままの目では何も見えない。不安なまま黙っていると、どこかに着いたのか大吾さんの脚が止まり身体の揺れが収まる。そろりと目を開けるとそこは……。
 
 べ、ベットルーム!
 
 私と大吾さんは二か月前に、一度だけ男女の関係を持った。でも一緒にマンションで暮らし始めて二日、同じベッドで寝ているのに大吾さんは、キスはおろか指一本触れなかったのだ。
 
 そう、まだ結婚初夜を迎えていないのだ。と言っても実際に結婚したわけではないから、初夜というのもどうかと思うけれど……。
 
 でもだからと言って、どうしてここにきてベッドルームに運ばれたのか。


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