契約夫婦のはずが、極上の新婚初夜を教えられました
 どうやら遠足前の子供のように、気持ちが高ぶっているみたいだ。でもワクワクというより、ドキドキのほうが勝っているようだけれど。
 
 予定していたより早い時間だけど、そろそろ起きて準備を始めよう……そう思ったのも束の間。このままでは起きるどころか、身動きすることも不可能だったことを思い出す。
 
 私の後ろからは、気持ちよさそうに眠っている大吾さんの規則正しい寝息が聞こえている。まだ時間は早いから、起こすのは忍びない。そうかといって目が覚めたのに、この状態のままなのもいかがなものか。
 
 いや、今のこの状況が嫌なわけではない。背中に伝わる大吾さんの体温は、私の身体を程よく温めてくれている。耳に当たる寝息がくすぐったいけれど、それはそれで大吾さんをじかに感じることができて幸せの極致だ。

 だから、もう少しこのままで……。

 そう思ってもう一度目を閉じかけた、そのとき。

「んん……八重、起きてるのか……」
 
 彼の腕の中でもぞもぞしていたから起こしてしまったらしく、大吾さんが耳元で艶っぽく囁く。


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