契約夫婦のはずが、極上の新婚初夜を教えられました
「あれ? 天海さん、どうかしたんですか? あまり顔色がよくないですけどぉ」
 
 でも私と大吾さんのことを知らない東さんは、怪訝そうな表情をして私の顔を覗き込んだ。

 東さんは勘がいい。ここで妙な表情をして下手に勘繰られるの困るし、そうかと言って今の私に笑顔を見せるのは無理。座っているからいいものの、そうじゃなかったらその場に崩れ落ちていただろう。

「東さん、ちょっといいかな。新ブランドのことで、確認したいことがあるんだけどね」

 恩田さんは私の様子を察して、東さんを会議室の外へと連れだしてくれる。ひとりになりたいと思っていたから、恩田さんの気づかいはありがたかった。

 苦しい──。

 今まで、どうやって息をしていたのかわからない。深く息を吸い込んで、それをゆっくり吐き出す。苦しくなるまで息を全部出しきった途端、大吾さんへの想いと共に大粒の涙が目から溢れ出す。

 そのうち身体が震えだし、ついに堪えきれなくなって嗚咽がこみ上げた。



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