契約夫婦のはずが、極上の新婚初夜を教えられました
 なにがなんだかわからない。大吾さんのことは信用しているし、彼がそんなことをする人だなんて思えない。

 でもあの画像に映っていたのは紛れもなく大吾さんで、どこからどう見たって愛し合うふたりの姿だ。

 やっぱり私は、あくまでも偽装の相手……だったということだろうか。偽装結婚から“偽装”が取れる日も近いと思っていたけれど、どうやらそう思っていたのは私だけだったみたいだ。

 こんな真実を突き付けられると、今の京都出張さえ彼女と一緒なんじゃないかと疑ってしまう。

 もうどうでもいい。どうせいつかは終わりが来るのはわかっていたんだし、それが早くなっただけのこと。

 それから終業までどうしていたのか記憶が無い。気づけばカバンを握りしめ、会社を飛び出していた。大吾さんと暮らすマンションには、もう帰れない。これからどうしたらいいのか途方に暮れながら、六月の初旬にしては肌寒い街をひとり歩く。

 行く当てなんてない。実家に帰ろうかと思ったりもしたが、父に『私は負けない』なんて大見えを切った手前帰りにくい。今夜一晩だけでも小梅に泊めてもらうことも考えたけれど、彼と同棲を始めたばかりの家に行くのは気が引ける。

 結局何も決まらないまま、夜の街を歩き続ける。どこをどうやって歩いてきたのかわからないが、気づけば見慣れたマンションの前に立っていた。



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