契約夫婦のはずが、極上の新婚初夜を教えられました
 大吾さんはそう言ってジュエリーケースからリングを取り出し、私の左手薬指にそっとつけてくれる。自分の左手が自分のものではないような錯覚に陥り、エンゲージリングが瞬く指をまじまじと見つめた。

「夢じゃないってわかったか?」
「はい」
「よし。じゃあ今から、婚姻届けを提出しに行くぞ。八重のご両親にはまだ許可をもらっていないが、大丈夫だ。了承してもらえる自信がある」

 大吾さんはそう言って胸を張るが、私もそう思う。大吾さんならきっと大丈夫、父も気に入って許してくれるに違いない。

「その自信、どこから来るんですか? でもだから、区役所だったんですね」
 
 車から降りると、ふたり連れだって区役所の中へ向かう。握られている手が熱い。大吾さんに力強く手を引かれ、安心な心持で彼についていく。

「あの、今日は土曜日ですけど大丈夫なんですか?」
「大丈夫、全部確認済みだ。受理してもらえる」
 
 大吾さんの言葉通り十五分ほどで作業は終わり、無事に受理される。これで私と大吾さんは晴れて夫婦となり、お互いに見つめ合った。



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