契約夫婦のはずが、極上の新婚初夜を教えられました
「あなたが天海さん?」
「は、はい。すみません、天海八重と申します」

 まるで観察されているような好奇な眼差しにどうにも落ち着かなくて、彼から目を逸らす。するとフッと小ばかにしたような笑い声が聞こえ、目線を戻した。

「大吾のやつ、こんな女のどこがいいのか。まあいい、こっちだ」
 
 目が合うなりそう言った斎藤さんは、さっきまでとは違う意地の悪そうな笑みを口元に浮かべた。まるで私のことを知っているような口ぶりに警戒心が芽生え、彼のあとをついて歩いていた足をピタリと止めた。

「どうして──」
「はい?」
 
 私の突然の問いかけに、斎藤さんも足を止め振り向く。

「どうして初対面の男性に、そんなこと言われないといけないんでしょうか。謝罪を申し入れます。もしそれが受け入れられないのなら、あなたみたいな人がいる会社なんてこっちから願い下げです。社長に会う必要もありません」
 
 どうだと言わんばかりに仁王立ちでいたけれど、斎藤さんのポカンと驚く顔を見てハッと我に返る。



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