契約夫婦のはずが、極上の新婚初夜を教えられました
「それは、社長室に行けばわかります。ご自分の目で、確かめてください」
 
 自分の目? 社長には会ったこともなければ、見たこともない。それなのに確かめてとか、それで何がわかるというのだろう。
 
 斎藤さんの言葉の意味を理解できないまま、社長室へと向かった。

「社長。天海さんをお連れしました」
 
 木製の重厚でクラシカルなドアが、音もなく開かれる。斎藤さんに促されるように社長室に入ると、窓際にあるシルバーと天然木のダークオークのコントラストがモダンなエグゼクティブデスクの奥に座る人影が目に入る。けれど逆光で、その顔はよくわからない。

「斎藤、悪かったな。もう下がっていい」
「わかりました。話が終わりましたら、声をおかけください。では、失礼いたします」
 
 斎藤さんは社長と会話を終えると、姿勢よく踵を返す。私の横を通り過ぎるときにちらっと一瞥したけれど、そのまま何も言わず社長室を出て行ってしまう。
 
 さ、斎藤さん? 私ひとり、放置ですか?
 
 社長とふたりきりで残された私は、為すすべもなく立ち尽くす。



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