契約夫婦のはずが、極上の新婚初夜を教えられました
 でも大吾さんは自己完結したように自嘲気味に笑い、頬にあった手を移動させ私の頭をポンポンと優しく撫でた。

「いや、なんでもない。とにかく今日のことは気にするな。わかったか?」
「はい。わかりました」
 
 そこまで言われたら、わかったとしかいいようがない。個人的には「それに」のあとが気になるけれど、これ以上聞くのは気が引ける。

「そんなことより腹が減った、飯食いに行くぞ。俺がよくいく洋食屋でいいか?」
「はい、お任せします」
 
 そう答えた途端、お腹がキュルルッと小さな音を立てた。今朝は時間がなくて、慌ててコーヒーを一杯飲んだだけだったことを思い出す。
 
 なにも、こんなときに鳴らなくてもいいのに……。もしかして聞こえた?

 横目でチラッと大吾さんを覗き見る。どうやらお腹が鳴ったことは大吾さんにはバレてなかったみたいだと、ホッと息をついたのも束の間。

 目の前にたくましい腕が現れて、なに?と運転席のほうを見ると、大吾さんが私に向かって近づいてきていて「きゃっ!」と思わず大声をあげてしまった。


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