契約夫婦のはずが、極上の新婚初夜を教えられました
 和子さんはそう言って、一度キッチンに戻る。しばらくしてビーフシチューを運んでくるとテーブルの上に置き、大吾さんにクスッと笑いかけた。その瞬間、見事といわんばかりに大吾さんの顔が赤くなり、何が起こったんだろうと目を見張る。

「か、和子さん。そろそろ食事を始めたいんですけど」
 
 大吾さんにしては珍しく慌てた様子でそう言って、私のことをちらっと見る。突然目が合いビクッと体を揺らすと、大吾さんもバツが悪そうに目を逸らした。
 
 なに、どうしちゃったと言うの? でも……。
 
 大吾さんが気になって仕方ないというのに、テーブルの上からビーフシチューの美味しそうな匂いが立ち込めてきて気が逸れる。

「あ、あの……」
 
 こんなときなんと言えばいいのだろうと困っていると、そんな私に気づいた和子さんが突然パチンと手を打ち鳴らした。

「そうね、私ったら少しお喋りがすぎたみたい。八重さん、ごめんなさい。ビーフシチューは主人自慢のお料理なのよ。さあ、冷めないうちにどうぞ」
「はい。いただきます!」
「いただきます」
 
 その場がパッと明るくなり、大吾さんの表情もいつもと変わらないものに戻る。さっきの様子は気になるけれど今は食事に集中と、柔らかく煮込まれたお肉をひと口頬張り、そのあまりの美味しさに舌鼓を打った。



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