契約夫婦のはずが、極上の新婚初夜を教えられました
 勝ったと言わんばかりにニヤリとほくそ笑んだ大吾さんが、満足そうにうなずいて私の口へ真鯛の刺身を入れる。

 食べ物を食べさせてもらうなんて何年ぶりだろう。いや、物心がついてからの記憶にないところを見ると、赤ん坊のとき以来だろうか。

 なんて、そんなことを考えていても口の中の新鮮な真鯛は身の締まりもよく美味しくて、ついお酒に手が伸びてしまう。

「あまり飲みすぎないように。雨夜の月は一般的なスパークリング日本酒よりも、アルコール度数が日本酒寄りで高い。後味がすっきりしていて飲みやすいからといってグイグイ飲むのはよくない」
「そうなんですね。わかりました、気をつけます」
 
 さすがは自社製品、よく知っている。でも確かに飲みやすい。バランスのいいお酒だからどんな料理にも合わせやすく、それに合わせてお酒の量もつい増えてしまう。

「でもここは自宅だ」
「はい?」
 
 そんなこと言わなくてもわかっているのに、大吾さんは笑顔でそう言うと私に向かって手を伸ばす。トンッと指の背が頬に当たり、輪郭をなぞるようにゆっくりと動き出した。艶っぽい視線に、鼓動が速くなる。



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