契約夫婦のはずが、極上の新婚初夜を教えられました
 お互いを想いあった素敵なご夫婦なのが、奥さんのことをそんな風に言えるのはいい関係を保っている証拠。それは、ふたりの会話を聞いているだけでもよくわかる。私たちもこんな夫婦に……。
 
 なんて、おかしなことを考えてしまうのは、瀬上さんご夫婦にあてられたせいかもしれない。そんなありもしない未来に思いを馳せるなんて無駄なことなのに。
 
 もう何度こんなことを思って、ため息をついただろう。いつまでたっても学習能力がないと、自分自身に呆れてしまう。

「どうしましたか、そんな憂鬱そうな表情をして?」
 
 憂鬱そうな表情……。自分では気づいてなかったけれど、今の気持ちが顔に出ていたようだ。

「すみません。大丈夫です、なんでもありません」
 
 こんなときに申し訳ないと、笑ってこの場をやり過ごす。でも瀬上さんも一枚上手だったようで。

「謝って大丈夫という人に限って、大丈夫じゃないんですよ。あたなは、奈々未によく似ている」
「奥様に?」
「さっきも言ったけど、うちに奥さんも大丈夫じゃないのに何もない、大丈夫だって謝る癖があってね。まあ、そこが可愛いんだけど」

瀬上さんはそう言って、おどけた顔をして見せた。



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