【完結】吸血侯爵と没落メイドの囚われ初恋契約
「そちらは、もう、仕える心づもりは出来たか。もう仕事の説明を始めてもいいか?」
「は、はいっ。よろしくお願い致します!」
返事をして、ルネリアは気づいた。グレンが先ほどから、ずっと自分のことを呼ばないことに。普通、屋敷の使用人を「そちら」などと慮ったようには呼ばない。彼女はしばらく悩んだ後、「私の名前はルネリアと申します」と一礼した。
「あっ、えっ、は?」
「あの、そちら、なんてもったいなきお言葉でございます。どうぞルネリア、もしくはお前と、お気遣いなくお呼びくださいませ」
「うっ、わ、分かっている。使用人の名前を把握するのも主人の務めだ。る、るね……ルネリア」
グレンは絞るようにか細い声でルネリアの名前を発すると、すぐに彼女から視線を逸らした。そして咳ばらいをして、「今から!」と大きな声を発し、城の大広間に反響していった。
「お前が使う部屋へ案内すると同時に、その荷物を、お前の部屋に移す」
「はっ、はいっ!」
グレンはルネリアの返事を待たずに彼女の背後に回り、外に繋がる扉を開け放った。しかし、不自然に自分の手元を確認する。