【完結】吸血侯爵と没落メイドの囚われ初恋契約
「荷物を運ぶ馬車はどうした」
「あ、あの、馬車が必要なほど荷物がなくて……、荷物はこの鞄に全部入れてあります。あっ、お金はこちらに」
ルネリアが使うことのなかった馬車の料金をグレンへ返そうとすると、それをグレンは手で制し「不要だ」と短く答えた。そして彼女の荷物を凝視すると、しかめ面をそのままに手を差し出す。
「貸せ」
「え」
「聞こえていないのか、お前の持っている鞄を貸せと言っている。持ち物の検査だ。暗器や毒液を仕込んだ瓶でも入っていたらたまったものではないからな」
手間を取らすなと責めるような口調で、グレンは再度手を出した。ルネリアが慌てて鞄を差し出すと、筋張った筋肉質な手でそれをがっしりと掴み、そのまま二階へと続く黒塗りの階段を上っていく。