【完結】吸血侯爵と没落メイドの囚われ初恋契約

 扉は廊下に並んでいたどの扉よりも重厚な薔薇細工によって仕立てられ、蝶が瞬くような金細工が目を引く仕上がりとなっている。その扉はさらにその横に見える扉と対になっているようで、城にとって重要な部屋だとルネリアはすぐに理解した。

「入れ」

 グレンはドアノブに手をかけ扉を開き、ルネリアに部屋に入るよう促す。促されるままルネリアが部屋へ入ると、そこは扉の細工と同じように豪勢な部屋が広がっていた。

 ベッドは、天蓋のついたもので、揺らめくようなレースは針のように細いのに、花々の刺繍が施され銀の糸によって光を受けて煌めいていた。机はその脚の細部まで伝統的な柄細工が刻まれ、椅子も同じように揃えられている。壁紙も敷かれた絨毯も真新しい。城は外装も内装も黒で統一されていたが、この部屋は白で統一されていて、城の高貴な雰囲気とは異なり清廉な空気を纏っていた。

 物に傷をつけないように。汚れはすぐに落とすように。部屋を見渡し、ルネリアは掃除をするときの順番を考えていく。しかしグレンは「ここがお前の使う部屋だ」と吐き捨てるように言った。
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