【完結】吸血侯爵と没落メイドの囚われ初恋契約

(当主様の、隣の部屋で、そしてこんなに豪華なお部屋を与えられるなんて……。もしかして、あれだけ契約を厳しく書き記していたのは、こういった好待遇目当てに働くことを公爵様が嫌だと考えてのこと……なのかもしれない)

 ルネリアは、部屋を見渡しながら、今までの契約書の内容について、一つ一つ思い出していく。そして、給金が当初低く設定されていたのは、給金やいい待遇目当てでやる気のない人間が応募しないようにしていたのだと結論づけた。

「何を考えている。逃げだす算段でも立てているのか? 無駄だ。この屋敷には私とお前しかいない。妙な物音が立てばすぐに分かる」
「こ、当主様と、私だけ……ですか?」
「ああ。この屋敷には俺とお前だけだ」

 グレンは当然のように頷くが、ルネリアは驚愕した。屋敷というものは、使用人一人と主人だけという状況はあり得ない。家令や執事、侍女、御者、厨房係や従者、掃除婦、他にも何十人もの使用人の力によって回っているものだ。
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