【完結】吸血侯爵と没落メイドの囚われ初恋契約
かつてルネリアがいた男爵家の屋敷でも、両手では数えられない程度には使用人が働いていた。しかし、その男爵家の屋敷の何十倍という大きさの城で、使用人はたった一人だけ。彼女は果たしてこれから先自分一人でやっていけるのだろうかという不安に襲われた。しかしグレンは見透かすように「心配は不要だ」と冷たい声色で突き放した。
「お前の経歴は知っている。今までどの屋敷にも勤めたことのない侍女に分不相応な仕事は求めない。お前の仕事は私の部屋の掃除と、その日私が指示した場所の掃除。あとは細かな整理だけだ。物を買いに行くことも、庭の手入れも食事も他にやる人間がいる。余計なことは考えるな。手が足りぬからお前を雇った。お前は手が足りない分の仕事をしろ。余計なことを考えるな」
グレンの言葉に、ルネリアはほっと胸を撫で下ろした。グレンは間髪入れず「それと!」と声を荒げ、しばらく考え込んだ後、「……当主様ではなくていい」と呟く。
「グレン様と呼べ。当主様では、この屋敷に人が訪れたとき、誰のことを言っているか分からなくなる。各家の当主が来るような場所だからな」
「分かりました。グレン様」
「くっ」