【完結】吸血侯爵と没落メイドの囚われ初恋契約
グレンはルネリアの呼びかけに、歯を食いしばる。そして「今日のところはもう休め」と言って、ルネリアの鞄を部屋の隅に置いた。
「十日間の長旅だ、どうせ今から仕事について詳しく教えても眠ってしまえば忘れる。今日のところは眠れ。明日に備えろ。仕事の服は一番右端にあるものだ。後の服は好きに使え。そしてこの部屋のものも、お前の好きにしろ。俺は隣の部屋で休んでいる。何かあれば壁を叩くなり部屋に来るなり好きにしろ、手洗いは廊下の左奥にある。今日はそこと部屋以外の出入りを禁じる」
「はい、グレン様。ありがとうございました。明日から、よろしくお願い致します」
ルネリアの返事にまた歯を食いしばり小さく唸ったグレンは、足早に部屋を出ていく。扉を開こうとする彼女に「不要だ、休め」と厳しく言いつけたグレンは、扉に手をかけ振り返り「逃げようと思うなよ。変な動きをしたらすぐ分かるからな」と付け足して、扉をそっと閉じた。
(とても優しい人のような気がする。それに、指示もとても分かりやすかったし、とても気を遣っているような気がする。声色は冷たく、目も睨むようだったけれど、言葉はわりと、真逆なような……。もしかして、視力があまり……)