カレシとお付き合い① 辻本君と紬

 まいちゃんは、そのまま、まっすぐズンズン勢いつけて戸口に行く。
 2人ともこちらを後ろにしてるから気がつかない。
 彼女たちの甘い話し声が耳ざわりに感じた。
 いかにも親しいですって周囲に知らしめるような。


「圭太〜〜終わったよ〜」


 まりは負けずに甘えた声を出し、岡本君に後ろから抱きついた。

 ほんとだ、岡本君、うれしそうな顔をした。


「あれ〜? この子達、知り合い〜? ごめんね〜今から私たち一緒に学校回るから〜、ねっ! 圭太! 」


と、わざとらしくまいちゃんが言う。
 岡本君と同時に私に気付いた辻本君は、自分の腕から女子の手をどけた。

 でも、その子はチラッと様子をうかがってから、


「理玖! 案内してよ! 私達、この学校わかんないんだし、久しぶりなんだから、いいでしょ! 」


と堂々と言った。
 まいちゃんが「はい? 」と怒りをあらわにした。

 岡本君が、まいちゃんの手をギュッギュッとにぎってから、ちょっと面白そうに、


「だってよ。どう思う? 紬ちゃん? 」


と私に聞いた。
 一斉(いっせい)に女子が私を見た。


「同じ学校なんだから、いいじゃん。ゆずってよ。私の方が理玖との貴重な時間なんだから」


 その瞬間、その子の優越感や特別感、媚びや甘えを感じた。
 正直イラッとした。
 なんで自分の時間の方が大事だと言い切れるんだろう。
 私にとってだって、辻本君との時間は一分一秒大事なのに。

 引いたらダメなんだ。
 黙ってたらダメ、言う事は言わないと!

 辻本君は私のカレシなんだから!


「久しぶりだから? 自分の方が貴重な時間、とか、決まってないよ。私達にとっても、一度しかない大事な時間です」


横でまいちゃんが、うんうんてうなずく。


「えっ? 」


とその子がキツく言った。


「でもずるいよ。今、私達は知ったんだから」
「ずるいって⋯⋯ 先に約束してる私たちに筋を通すべきだと思うし⋯⋯ 私は一緒に回りたいからゆずりたくない。もし⋯⋯ 優先すべきことが出来たら、ちゃんと説得して納得しなきゃ嫌です」


 シーン、としちゃった。


「うわっ、何このひと? 真面目? なにー、むりー」


と、その子がうわぁ〜って表情をして寒そうに自分の腕をこすった。
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