カレシとお付き合い① 辻本君と紬

元カノ⋯⋯ 。
 聞こえた瞬間、私は持っていた水を落とした。
 ついでにそれがとなりの飲み物にもあたり、数十本の飲み物を次々とひっくり返して、

ガラガラ、

ばしゃーん

と、盛大にいろんな水分が飛び散り、あわてて今度はすべって、水たまりに座り込んだ。

元カノ⋯⋯ 。

立ち上がろうと手をかけたら、パイプ椅子で、立てかけてあった分全部を派手に倒して、すごい音がした。


「うわ、うわ、紬、大丈夫⁈ 」


 教室が大騒ぎになって、お客さんのはずの子も、周りにいた人も、あわてて、雑巾やらティッシュやら出して、どうにかしようとしだした。


「ひゃー、ごめんなさい!」


と必死で謝った。
 最悪、
 私も、元カノも最悪!
 みんながそれぞれ手伝ってくれて、もっと申し訳ない。


「なんの(さわ)ぎだよ! 」


 教室に辻本君と元カノが戻ってきて、私は顔が見れなかった。
 恥ずかしかったし、それより2人が話してるのもすごい嫌だった。
 あわてた辻本君が、


「おいっ! 」


と言って、私の真前に来て、


「けがは⁈ 」


と手を伸ばした。


「うん、後でするから大丈夫! 私がこぼしただけだから片付けないと⋯⋯ ! 」


とちょっと彼の手を払ってしまった。
 元カノなんかと、話をしてるから⋯⋯ 。


 情けないやら、元カノやら、私は涙目になって、パイプ椅子を起こして、あーでも、パイプ椅子も、一脚一脚ふかないといけないんだ、ぬれてるよ⋯⋯ 。
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