センチメンタルナイト【完】



「……本当にいいの?」
「ああ」
「就活あるならしゃーないかぁ。ていうか私美容師の資格なんて持ってないけど」
「夕紀は器用だから初歩的なヘマはしないだろ」
「なんでそんなに信用されてるのかな。まぁ嬉しいけど。それじゃ始めるからねー。終わってからクレーム訴えないでよ」


俺が過度な女遊びを止めたのは、大学三年の時のことだった。
高校を卒業してそのまま就職をするつもりでいた俺は、密かに資金を貯めていてくれていたお袋に強要されて大学へ進んでいたのだ。
そろそろいい加減落ち着くべきだとも自覚していたし、ようやく本気で一人の女を好きなれたから、分かりやすくケジメをつけようと考え方を改めた部分もある。

バイトを終えたある休日の深夜に夕紀を一人暮らしのマンションに呼び出した。
長年維持してきた長髪を切り落としてもらうために。
断髪をすることで自己を心機一転させる展開を、何かのドラマやら漫画やらで見たことがあるから、それに則ってみただけの軽はずみではあった。
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