センチメンタルナイト【完】
ただ、あえて美容室にはいかず相手は選んだ。
選ばれた当人はなんで自分がとも言いたげに首を傾げながらも「勿体ないなぁ」とハサミを動かす。
就職活動のために落ち着いた色に染め上げられた髪の毛が、新聞紙を敷いた足元に散らばっていく光景を見届けながら、少しずつ軽くなる頭の中で色々な思いを巡らせていた。

ひと月ほど前、火野に彼女ができたそうだ。
正確には元カノと寄り戻ったというべきか。

火野は高校の時に活動していたバンドグループに所属するメンバーの一人であり、未だ夕紀が一方的な想いを馳せている相手でもあった。
以前火野に彼女ができたのを教えた時は酷く落ち込んでいた夕紀を慰めようとカラオケに行ったりしていたが、今回ばかりは黙っておこう決めている。
なぜなら前回と違い、火野と今回の彼女は明らかに結婚が前提で話が進んでいるのを、俺が知っているからだ。
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