余命38日、きみに明日をあげる。
第5章
暴れだす心臓
目覚めた瞬間からものすごく体調がよかった。
病気のせいか、体が重かったり頭がぼーっとしている朝も多い。
けれど今日はとても体が軽くスッキリしていた。
きっと、琉生が作ってくれたマドレーヌのおかげだ。
紙袋の中に残っている分は、学校から帰ってきてのお楽しみ。
一晩経ってさらにしっとりしたマドレーヌは、甘さが増して、また違った美味しさがある。
「莉緒、今日は雨が降るかもしれないから、折り畳み傘持って行きなさいね」
「うん、わかった」
さすがに朝は一桁台の気温になってきたので、今年初の紺色のコートに袖を
通す。
かばんに折りたたみ傘を突っ込み、姿見で自分の姿を一度確認してから家を出た。
光る朝日が、いっそう寒さを際立たせる。白い息が、口元から生まれてすぐに消えた。
「おはよう」
「おはよ」
外に出ると、いつものように琉生が待っていた。片手をあげて、私に向かって柔らかく微笑む。