余命38日、きみに明日をあげる。

自分の道


衝撃だった。……莉緒が死の神を知っていたとは。

病室を出ると、俺はドアに背をつけるようにズルズルとしゃがみ込んだ。

ちょうど面会時間が終わりなこともあり、一斉に帰る面会者が俺の前を不審な目で横切っていく。

「大丈夫ですか?」なんて声をかけてくれる人もいて、俺は軽く会釈だけした。

途中から、自分が何を言っていたかよく覚えていない。

まさか莉緒から死の神の話が出てくるとは思いもしなかった。

アキちゃんも死の神に会っていて、そんなに前から莉緒は死の神の存在を知っていたなんて。

死ぬ人間は、すべて死の神に会うということなのだろうか。

莉緒は自分の所に来ていないから、その時が迫っているとは思ってないんだ。

実はもう来ているなんて、口が裂けても言えない。

そもそも、どうして俺のところに来たんだ……?

俺が願いを叶えてやれば、延命できる。今回はそういう理由で、莉緒ではなく俺の前に姿を現したのだろうか。
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