余命38日、きみに明日をあげる。
ケーキは断面図も腕の見せどころだとは言うけれど。
俺はためらいもなくケーキに直接フォークを入れた。
「えーっ! ほんとに!?」
そして焦り声をあげる莉緒の口元へと運んだ。
「……っ」
有無を言わせない俺の行動に、莉緒は黙る。
白い頬が、みるみる赤く染まっていく。
「早く、口開けて」
「……うん」
ほんのりピンクに色づいた唇は、きっとリップを載せたんだろう。
俺が来るからと、オシャレしたのだろうか。そうだとしたら嬉しい。
恥ずかしそうに小さく開かれた口。
その艶っぽい仕草を直視すると俺の心臓が持たなそうで、サッとケーキを放り込んだ。
「美味しい……」
ほっぺたが落ちそうという表現は、こういう笑顔のことなのだろうか。
ふふっと笑いながら、肩を少しあげて、嬉しそうに両手をほほに当てる莉緒。
最後にこの笑顔が見れて幸せだ。