余命38日、きみに明日をあげる。
「琉生はきっと、世界一のパティシエになるね」
感慨深そうに口にする莉緒は、自分がいない未来を想像しているのかもしれない。
……莉緒は生きるよ……ただ、そこに俺はいないけど。
机の上に置かれた無防備な手に、自分の手を重ねた。
温かくて、柔らかい。それだけで安心する。
「琉生がいてくれると思ったら、もう何も怖くないの」
「うん」
「でも、反対に幸せすぎて怖いかも」
「なんだよそれ」
俺は、莉緒の頭をくしゃくしゃとなでてた。
莉緒は肩をすくめて嬉しそうに「きゃー」と言う。
なんだかんだ、俺に頭を撫でられることはいやではなさそうだ。
ふたり用の小さいケーキは、あっという間になくなった。
莉緒と一緒にいると、時間が過ぎていくのがとても速い。
冬至を迎えたばかりのこの時期、気付けば、窓ガラスには自分の姿が映っていた。
外の街灯には明かりが灯り、すっかり日が落ちたことを知る。