ありきたりの恋の話ですが、忘れられない恋です

「繋いでないです。あれは腕を掴まれただけです。お土産を渡す為に車まで連行されたようなものです」

やばい…ちゃんと否定しておかないと、小倉さんの口から既婚者と不倫してるとか、噂が広がる。

「そんなふうに見えなかったけど⁈」

あー、ここ大事なとこだ。

「私、…実は就職する時に結婚するからって振られてるです」

小倉さんは驚いた顔の後、一瞬だけニンマリと笑った…気がした。

たぶん…

「可愛いくて気遣いできるのに、ふるなんてね…彼女がいるって知らなかったの?」

「はい。そういう気配に疎かったんですよね」

振られたんだって方が小倉さん的に同情してくれるかも…なんていう下心です。

でも、小倉さんの心がこもっていない口ぶりに、失敗したのでは⁈と内心焦って言い訳を付け足した。

「よく家に遊びに来てたので、憧れから好きだって気がついて、可愛がってくれてたので、彼も私と一緒の気持ちだと勘違いしちゃって…結果、振られたんですけど」

「そういう環境だと勘違いしちゃうかもね…まぁ、篠原さんには高嶺の花だっただけよ。あなたには、あなたに似合った人がいると思うわよ」

慰めてるようで、ケンカ売ってます⁈

ふふふ…と笑った小倉さんは、「じゃあね」と足取り軽く出ていかれました。
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