ありきたりの恋の話ですが、忘れられない恋です

ボルドーカラーの体にフィットしたカットソーに、インディゴブルーのスリムのスキニー姿。そして、髪もカジュアルに崩していた。

細身なのに、程よくついた筋肉質が服越しでもわかり、似合っていて見惚れてしまう。

「えっと、どうしているのかな?」

「ノンちゃん会いたかったからだよ」

「昨日会ったよね」

「そうだね。別れた後、また会いたくなって引き返そうと思ったんだ。でも、今日まで我慢したんだよ」

「褒めて褒めて」と、ニコニコと笑顔で言っている。

嬉しくて、抱きつきたいけど、理性が勝った。

「既婚者のくせに」

「うん…でも、ごめん。この気持ちはもう止めれない」

当たり前のように手を出してきて、戸惑っている私の手を掴んできた。

「送っていく…乗って」

反対の助手席まで手を繋いで歩く少しの時間、彼と繋ぐ手を見つめながら、切なくて苦しい。
でも、この手を離せないのだ。

私のマンションまで、車で数分ほどの距離の車内で、彼はご機嫌な様子でいる。

「ねぇ、何しに来たの?」

「会いたかったから会いに来た」

「わざわざ隣県まで」

「ノンちゃんに会うのに隣県まで来るぐらい苦じゃないよ」

その時、信号で止まり「仕事があるから毎日は無理だけど」といい、私の頬を指の背で撫でながら、蕩けそうな甘い笑みを浮かべた。
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