ありきたりの恋の話ですが、忘れられない恋です

そういうなら、なぜ3年前に私を選んでくれなかったのだろう…

「晶兄、私の気持ちわかってるよね。振ったのは晶兄だよ」

「うん…ずっと後悔してた。だから、ノンちゃんとの時間を取り戻したい」

後ろからのクラクションに、甘くなりそうだった雰囲気は無くなり、晶兄は車を走らせた。

ホッとして反面、残念な気持ちが表情に出ていたのだろう。膝で握っていた手を、彼の手のひらがぎゅっと握ってきて、宥めるようにポンポンと指先が動いている。

それが、私の心を見透かしてるようでくすぐったい。

短いドライブもマンションに着いたことで、終了なのに離れ難く車から降りれないでいる。

握られていた手が離れ、ガチャンと私のシートベルトが外れた音にビクッとなった途端、横から伸びてきた手が私を抱きしめていた。

優しく頭を撫でる手が気持ちいい。

「さっき、元気がなかったようだけど、職場で何かあったの?」

そういう優しさは、彼女でもないのにしないでほしい。

「ううん、なんでもないよ」

「そう⁈」

「うん」

抱きしめられていた腕が緩み、すぐそこに晶兄の顔があった。

「話したくなったらいいなよ」

頭をポンポンと撫でられて、子供扱いされてるようでムッと唇を尖らせた。
< 42 / 73 >

この作品をシェア

pagetop