愛は知っていた【完】
「ねえ先生。さっき慰めてくれるって言いましたよね?」
「言ったね」
「だったら、私のこと抱いてください。体で癒してください。先生なら大人のやり方ってのを知っているんでしょう?」


私がにんまりと問えば、白井先生は呆れたように溜息を吐いた。
私が優位に立てているのはとんだ勘違い。
だってほら、今こうやって白井先生に馬乗りになって上から目線で言葉を紡いだ唇は、微かに震えてるもの。


「慰めるっていってもね、流石の僕も犯罪者になり下がるつもりはないんだよ。話を聞いて、君が後悔しないような答えへ導いてあげようとしただけで」
「……なんですか、それ」
「兄妹揃って偉く不器用なんだね、君たち。ついでに臆病でもあるかな」


そうクスクスと笑いを零す白井先生に若干の苛立ちを覚えたのは、図星を突かれたから。
臆病も何も、兄妹という障害さえなければ私は既に告白してる。
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