愛は知っていた【完】
「もしもし英?僕だけど、」
「あっ!ちょっと!」


すぐに携帯を取り戻した私は慌てて通話終了ボタンを押した。
しまった、せめてすぐに弁解して誤解を訂正してから切れば良かったかもしれない。
と言っても今更かけ直すのも……。

ていうか信じられない。なんてことをしでかしてくれるんだこの最低男め!
お陰さまで今日は私の中にある白井先生の株がつるべ落としの如く急降下だ。

気分を害した私は上着を着て鞄を持つなり、ご馳走様でしたと軽く頭を下げて玄関に向かった。
ローファーを履いて家を出て行こうとした私に後ろからかけられた言葉が、より一層不愉快を煽る。


「後悔しても知らないからね」


……余計なお世話だ。
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