愛は知っていた【完】



帰宅した私にお兄ちゃんは尋問のように詰め寄ってきた。
なんで白井先生と一緒にいたのかだの、どこで一体何をしていただの、他に誰かいなかったのかだの。
まだ玄関で靴も脱いでいない私に、血相を変えて立て続けに一方的な質問を繰り返してくる。

こうなってしまったのもあの男が馬鹿なことをしたせいだ。
美味しいご飯をご馳走してもらったことには感謝するけど、私とお兄ちゃんの仲を裂くような真似までして。
慰めてあげるとか気を遣うような言動を仄めかしておきながら、結局は裏目に出てしまっているじゃないか。

その時私の心境は先程の出来事のせいでとてもイライラして不安定な状態にあった。
そのせいで思わず言い放ってしまったのだ。


「お兄ちゃんには関係ないでしょ!」


言ってからすぐに後悔した。
さっき、あの男から言われたばかりだというのに。
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