愛は知っていた【完】
今までも何度か受けてきた告白を断り続けてきた俺が、彼女の気持ちを受け入れてやった理由はただひとつ。
関心の焦点を彼女に向けて朱里から少しでも目を背けるためだ。

だがこれが思いの外上手くいかなかった。
彼女といる時間が増えるほど朱里を求める情熱が強くなって、更に朱里がマネージャーを辞めてしまったため、ますます朱里と過ごす時間が減ってしまったことに対してストレスを感じるようにもなっていた。
風呂も寝床も別々、朱里は夕食の席も意図的に俺と一緒になることを避けているような気がした。

とにもかくにも朱里が視界に入っている時間が急減したのだ。
不安でどうにかなってしまいそうだった。
でも元はと言えばこれこそ俺の思惑通り。
これで良かった。これで朱里は俺と言うしがらみから解放されたんだ。

きっと俺の見えないところで他の連中と楽しく過ごしているのだろう。
難しい年頃なんだから兄離れして当然。
いや、そうであるべきだ。そうしてくれないと俺は……。
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