君のブレスが切れるまで
 雨は私がわかりやすいと言っていた。この人からも、私の考えていたことがバレている。つまり、私はきっと本当に――。


「そんなまさか! ただすっごく真剣な顔で選んでいたから、自分用ではないのかなと思って。プレゼントを選ぶお客様は、誰もがそんな顔をしているから……もしかして気に触っちゃったかな……?」


 店員さんはばつが悪そうな表情をする。
 この人は仕事柄、人がプレゼントを選ぶ時のような表情を見てきただけであって、別に私のことがわかるわけではなかったみたい。


 雨と一緒にいると、彼女は私のことをすべてわかっている気がしていた。それの影響か他の人にも私の考えが読まれているんじゃないかと錯覚に陥ってしまう。
 けど違った。雨が特別なだけであって、やはり他の人には私のことはわからない。私がこの店員さんのことがわからないように、彼女も私のことはわからないのだ。
 だから、少しだけ安心した。


「いえ、その……やっぱりギフトラッピングお願いしてもいいですか?」
「あ、はい! 承りました!」


 さっきのことで申し訳なく思っているのか、敬語になっている店員さん。私も安心したせいか、思わず頼んでしまった。
 九時を過ぎ、少しだけ時間がかかってしまったが綺麗なラッピングを施してもらう。


「遅くなってごめんなさいね」
「いえ、こちらこそ……閉店時間ぎりぎりだったのに」
「そんな! ……プレゼント、喜んでもらえるといいね」


 私は何も言わず頷くと、少しだけ自分の頬が緩んでいる気がする。


「また来てね」
「……はい、また来ます」


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