君のブレスが切れるまで
 遅いねなんて一言も言ってないじゃん、私は気にしてないよ。
 けれど、そんなことは言わない。無言のままで私は奥まで歩いていき、先に家に入った彼女の後へ続く。


 明かりの付けられた玄関はキッチンとセットになっているようで、綺麗。というか借りてからそのままなんじゃないかという感じ。キッチンにはお皿も何もないし、ガスコンロすらもない。引っ越しすると言っていたから、全部纏めているのかもしれないけど。


 左に扉がある。お風呂かトイレかな。そして前には、スモークガラスの付いた扉。こっちはリビングだろうか?


「靴、脱げる?」


 先に家の中へ上がっていた彼女がバスタオルを手渡してきて、聞いてくる。


「馬鹿にしてるの? 靴くらい――」


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