君のブレスが切れるまで
 無表情なのに懇願するような赤い眼、そんな彼女に先程からの罪悪感が更に強くなる。
 私は何も言えなくなってしまい彼女の眼から顔を背け、全てを委ねた。委ねることしかできなかった。
 彼女は救急箱から包帯を取り出すと、手早く右足、人差し指と中指にくるくると巻き付けてくれる。優しくしてくれているのはわかった。けれど、どんなに優しくされようと痛いものは痛い。
 低い声が若干漏れ、次はそんな声をあげないように、と手で口を噤む。だけど、自分の顔が歪むのは隠せなかった。


「少しだけ我慢して」


 言われなくても、我慢してる。私の顔も見ずに言うのは、足がピクピクと動いてしまったからだろう。
 ある程度、巻き終わるとテープをつけて外れないように固定してくれた。


 どうしてここまでしてくれるんだろう。
 こんなに優しくされたのなんて久々すぎて、悪い考えしか浮かんでこない。


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