政略結婚から始まる蜜愛夫婦~俺様御曹司は許嫁への一途な愛を惜しまない~
 必死に涙を拭っていると、零士君がそっと指で拭ってくれた。

 すると笹野さんはため息を漏らした。

「付き合っていられない」

 ゆっくりと立ち上がると、嫌悪感を露わにして私と零士君を見た。

「今の零士さんに、なんの魅力も感じません。どうぞお幸せに」

 淡々と言うと、浴室から出ていこうとする笹野さんを零士君は呼び止めた。

「綾子、タクシーを呼ぶから待ってて。それに病院も行ったほうがいい」

 零士君の声に足と止めた笹野さんは、耳を疑うことを言った。

「大丈夫です。珈琲がかからないようにガラス容器を落としたから。全然痛くないもの」

「えっ」

 あれほど私にやられたと言っていたのに、あっさりと自分でやったと認めた笹野さんに、私も零士君も絶句してしまう。

 そんな私たちを見て、笹野さんはにっこり微笑んだ。
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