政略結婚から始まる蜜愛夫婦~俺様御曹司は許嫁への一途な愛を惜しまない~
 零士君の顔が利く企業といっても限りがある。様々な職業があるんだもの、選択の余地はあったはず。

「誰かに頼ったり、誰かのせいにしたりしないで自分の力で頑張ってみればいいじゃない」

 わかってほしくて言ったものの、文也は「うるさい!」と怒鳴った。

 通行人たちは、何事かと足を止めて私たちを見ている。だけどそんな人の目に気づかないほど、文也は怒りで震えていた。

「わかったようなことを言うな! 凛々子のせいだ、凛々子が全部悪い。それなのにお前、何様だよっ!」

 私に向かって文也は大きく手を振り上げた。

 殴られる。そう覚悟を決めて目を瞑った瞬間、荷物が地面に落ちる音がした。痛みは襲ってこない。

 ゆっくりと目を開けると、私を庇うように立っていたのは零士君だった。

「零士君……」

「ごめん、凛々子。遅くなって」

 苦しそうに顔を歪めると、零士君は前を見据え、文也と対峙した。

「凛々子になにをした?」

 低くて怒りを含んだ声に、さっきまで興奮していた文也は困惑しているのか、声を震わせた。
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