政略結婚から始まる蜜愛夫婦~俺様御曹司は許嫁への一途な愛を惜しまない~
 そういえば私、零士君が営業の仕事をしているってこと以外、なにも知らない。
 彼の好きな食べ物もよく聞く音楽も、趣味や特技もなにも。

 そういう会話をいっさいしてこなかったのだから、当然といえば当然だ。でもなぜすごく寂しく感じてしまうのだろうか。

 その答えが見出せずにいると、電話を終えた零士君が戻ってきた。

「ごめん、凛々子」

「ううん。……仕事、大丈夫だったの?」

「あぁ、大丈夫。早く食べて次行こうか」

「そうだね」

 仕事のことで話をされても、私にわかることなんてなにもないもの。零士君が話してくれなくて当たり前だ。

 ヴォージュ広場を後にして徒歩で移動していると、目に入る建築物について零士君が説明してくれた。

 仕事でパリを訪れるたびにガイドしてもらっていたから、自然と覚えてしまったそう。

 私はずっと大学を卒業したら零士君と結婚するものだと思っていたし、文也と出会ってからも、家を追い出されてもどうにかなるって安易な考えでいた。
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